バートン・フィンク

社会派の作品で高い評価を受ける劇作家のバートン・フィンク。劇場で公開された最新作は好評を博し、その実力を見込んだハリウッドの大手スタジオが彼に映画の脚本執筆のオファーを出す。悩むバートンだが、最終的にスタジオ専属脚本家となる契約を結ぶ。バートンの新たな雇い主となる傲岸な社長は、彼にウォーレス・ビアリー主演予定のレスリング映画の脚本執筆を依頼する。スタジオから滞在先を宛がわれたバートンだが、そこは不気味な雰囲気の漂うおんぼろホテルだった。ホテルの隣人は自称保険勧誘員のチャーリー・メドウズ。かねてより労働者階級の人間に親近感を持っていたバートンは、チャーリーとすぐに仲良くなる。
ホテルで脚本の執筆を開始するバートンだが、スランプに陥り仕事がはかどらない。悩むバートンは、尊敬する小説家で同じくハリウッドで仕事をしているW・P・メイヒューに相談しようとする。アドバイスを乞うためメイヒューの宿舎を訪問したバートンは、そこで出会った彼の私設秘書オードリーに好意を抱く。バートンはメイヒューとオードリーの三人でピクニックに行くが、アルコール依存症のメイヒューはバートンの前で醜態を晒す。メイヒューに失望したバートンは、オードリーをホテルの自室に招いて脚本についての助言を求めるが、その際彼女と関係を持ってしまう。
翌朝目を覚ましたバートンが発見したのは、無残に殺害されたオードリーの死体だった。混乱して隣室のチャーリーに相談するバートン。そんな彼をチャーリーは宥め、死体の処理を引き受ける。後始末を済ませたチャーリーは、彼の仕事の都合でニューヨークに行かねばならず、その間バートンが「箱」を預かって欲しいと言う。チャーリーが去って虚脱状態のバートンの元にロサンゼルス市警察の捜査官と名乗る男たちが訪ねてくる。彼らはバートンに、チャーリーが実は「狂人ムント」と呼ばれる殺人鬼だと告げる。部屋に戻ったバートンはスランプを克服し、一心不乱で脚本を書き続ける。
無事脚本を完成させたバートンはダンスパーティーに繰り出す。ホテルの自室でバートンを待っていたのは、件の捜査官たちだった。彼らはバートンにメイヒューが惨殺されたという記事が載っている新聞を見せる。ベッドに残された血痕についてバートンを尋問する捜査官たちだが、そこにチャーリーが帰還する。チャーリーはホテルに火を放ち、捜査官たちをショットガンで射殺する。凶行の後、チャーリーは彼の人生観をバートンに語る。何故自分を巻き込んだのか問い掛けるバートンに対し、チャーリーは彼が自分の話を聞こうとしなかったからだと怒りを露にする。謝罪するバートンを許し、チャーリーは炎上する隣室に消えていった。バートンも脚本と「箱」を持ってホテルから立ち去る。
バートンが書き上げた脚本を読んだ社長は激怒、脚本を没にするのみならず、以後彼をスタジオで飼い殺しにすると言い放つ。失意のバートンはチャーリーから預かった「箱」を抱えて浜辺へさまよい出る。そこで彼が見たものは、ホテルの壁に掛かっていたポートレートを髣髴させる美女だった。彼女がバートンの前でポートレートと全く同じポーズをとるショットで映画は幕を閉じる。